ご相談ありがとうございます. 小児科医の速水です.
小児科医の立場からは断食は勧められません.
その理由を
【1.断食が人間に与える影響】
【2.妊活中の断食が将来の子どもの人生に与える影響】
について説明したいと思います. 長くなりますが, 読んでいただければと思います.
【1.断食が人間に与える影響】
断食や極端なダイエットを行うと飢餓状態となった人間の脳の中でβエンドルフィンという脳内麻薬が分泌され, “調子が良くなったように感じる“ことがあります.
相談者様の“活力が出てきたように感じる”というのはこの脳内麻薬の影響だと思います.
人間に限らず哺乳類の脳にはこのような機能があることが知られています.
少し具体例を出したいと思います.
何日も食事にありつけていないライオンを想像してください. このライオンが食べ物にありつくためにはシマウマを捕まえて食べる必要があります.
飢餓状態のままではライオンは動けないため, シマウマを捕まえることができません.
そこでライオンの脳では飢餓状態を麻痺させるためにβエンドルフィンを分泌させ, 麻薬の作用で体を無理矢理覚醒状態にして活動・命の維持ができるようにしているのです.
命を守るための生物学的な戦略です.
しかしこの方法には2つ問題があります.
・断食に伴い体の筋肉や脳が萎縮すること・
・分泌されるβエンドルフィンは麻薬であるために依存性がありダイエット・断食依存から抜けられなくなることです.
これは拒食症の患者さんで起きていることと同じです.
家族の大黒柱であるお父さんには, そうなってほしくありません.
お子さんがお父さんの影響を受けてしまうことも心配です.
【2.妊活中の断食が将来の子どもの人生に与える影響】
現在の医学では赤ちゃんがお母さんの子宮の中にいる胎内環境が赤ちゃんの人生に影響するだけでなく, 妊娠前のお父さん・お母さんの体験が赤ちゃんに影響するということが知られています.
実際ヨーロッパでは精子トレーニングの研究がされていて, 肥満の男性が妊活前に適切な運動をして体質改善することが子どもの人生に良い影響を与えるのではないか, と予想されています.
ポイントは一般的な食事・一般的な運動を行なって健康状態を維持して妊活を行う, ということです.
では断食はいかがでしょうか?
過去にはが<子ども・孫世代の肥満・成人病のリスクを上げた> というデータがあります. 第二次世界大戦中, オランダではナチスドイツによる兵糧攻めにより飢餓の時期が長く続きました. そしてその子ども・孫の世代では, 普通の食事を食べているのに, 肥満・成人習慣病の頻度が増えたのです.
これは親の世代で飢餓があったために, 子どもの世代が飢餓に対応できるように, 親の遺伝子に機能の変化が起こり(エピジェネティクス), 遺伝子が子どもの世代に伝わった結果だと考えられています.
【まとめ】
お父さん自身への影響・お子さんの世代への影響を考えて小児科医の立場からは断食は勧められません.
お父さんご自身の健康を保った上で, 相談者様の家族が幸せに過ごされることを祈っております.