こんにちは。
妊婦や授乳婦に対して、薬を使用して問題ないかを調べようとすると、妊婦や授乳婦を多数集め、薬を使う人と使わない人に分け、そのほかの条件を均一にして、赤ちゃんに影響がなかったかを調べるという、人体実験が必要になります。
人道上・倫理上、そういう実験は難しいです。また、人体実験を行うには、多額の費用が必要になりますが、製薬会社にとってみれば、それだけの費用をかけてでも、妊婦・授乳婦にこの薬が売れるという目算がない場合、実験をするのではなく、「妊娠中や授乳中の女性に使うときは、個別の場合において必要性を判断するように」という、結局現場の医師に判断を預けるような文言を、薬の添付文書に書くという解決法になります。
人体実験の代わりに、実験動物に薬を多量に与え、母乳中に薬が出てきたかとかを調べるのですが、もちろん動物と人間では、薬の体内での代謝も違いますし、体重も違うので、単純に比較ができません。また、母乳中に薬が少し混ざって、それを赤ちゃんが飲んで、本当に問題があるのかどうかも謎です。それを調べようとすると今度は赤ちゃんを多数集めて薬を飲ませるという人体実験が必要になりますがそれもやはり倫理的に・費用面で難しいということになります。
絶対に妊娠中・授乳中に使えないと分かっている薬は、放射線を発する薬、抗がん剤の一部、明らかに重大な問題を赤ちゃんに起こすと過去の事例から分かっている薬などで、ごく一部の薬のみになります。
それ以外の薬は、今までにその薬のせいで明らかに問題が起こったという報告がない薬ですが、上記のような人体実験を経ているわけではないので、添付文書には「安全という保障は製薬会社としてはしていません」という文言が書いてあることになります。
ご記載の薬は、キノロン系という抗生物質の一種です。添付文書には、「低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は13歳未満の小児に対する安全性は確立していない(使用経験がない)。」と書いてあり、「(1) 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には使用しないことが望ましい。〔妊娠中の使用に関する安全性は確立していない。〕
(2) 授乳婦には使用しないことが望ましいが、やむを得ず使用する場合には授乳を避けさせること。〔薬をネズミの皮膚の下に注射した時、乳汁中に移行することが認められている。〕」とも書いてあります。この薬が混ざった母乳を飲んだネズミの赤ちゃんに問題が起こったかどうかは書いてありません。
この薬のせいで明らかに問題が起こったという報告はないが、妊婦・授乳婦・赤ちゃんへの人体実験はされていない、という薬になると思います。経験上、授乳婦にも使用されることがある薬ではあると思いますし、この薬のせいで赤ちゃんに問題が起こったという報告がある薬ではないと思います。
ただご不安な気持ちのあるまま薬を使用するのも大変だと思いますので、他の治療法が考えられないかご相談されることも考えられるとは思います。薬の影響について心配が強い方もおられれば、あまり気にしない方もおられますし、一日一回しか授乳していない人と、母乳しか飲めない赤ちゃんを育てている人とではまた考え方が違うのも当然と思います。